広尾学園中学校は国内屈指の国際教育環境を誇り、帰国生はもちろん、国内で高度な英語力を培ってきた国内受験生からも注目を集めています。
広尾学園のインターナショナルコースAG(アドバンストグループ)に進学するための英語入試は、単なる知識テストではなく、英語を使って思考し、自分の意見を論理的に伝える力が問われる点が大きな特徴です。小説や詩の読解、エッセイ、日英両方での面接などを通じて「英語で考え、英語で伝える力」を持つ生徒を選抜します。
この記事では、2025年度の最新情報に基づき、広尾学園中学校の英語入試の概要から出題構成、具体的な面接の質問例、さらには日頃の準備のコツまで、保護者や受験生が押さえておきたいポイントを徹底解説します。
広尾学園中学校とは?|学校概要と国際教育への取り組み
広尾学園中学校は、「国内で国際人を育てる私立中学」の代表格と言える学校です。「自律と共生」を教育理念に掲げ、生徒ひとりひとりの個性やバックグラウンドを尊重し、互いに刺激し合う環境を作っている点が、多くの保護者に支持されています。
基本情報と教育の骨格
まず基本情報から。所在地は東京メトロ日比谷線「広尾」駅から徒歩すぐの南麻布5-1-14。アクセスが良く、都心でありながら大使館エリアに隣接する落ち着いた環境で学べます。校舎は地上9階、地下1階で、屋上にはソーラーパネルを設置するなど環境配慮への取り組みも見られます。グラウンド、体育館、武道場など運動施設も十分で、成長期のお子さんが体も動かせる環境が整っています。
生徒数は中高合わせて約1,500名。そのうち帰国生は中学で約20〜30%程度在籍しており、国際色が強い学びの集団になっています。
学校には「本科コース」「医進・サイエンスコース」「インターナショナルコース(AGとSG)」の3つのコースがあり、中学からコースを選びます。インターナショナルコースはさらにAG(アドバンスト)とSG(スタンダード)に分かれており、AGは英語で多くの授業が行われるなど、より英語運用力が求められる設定です。
探究・ICT・グローバル教育を支える体制
広尾学園では「探究学習」が非常に重視されています。中学生のうちから、テーマを見つけ、大学や専門家とも協力しながら自ら課題に取り組むプロジェクト学習があります。具体例として、インターナショナルコースと医進・サイエンスコースの生徒が協力した「宇宙開発プロジェクト」があげられ、人工衛星製作プロジェクトなどにも取り組んでいます。これは単なる物理・技術の学びだけでなく、リサーチ力・プレゼン力・国際理解などを育てる場として機能しています。
ICT教育も進んでおり、授業でのデジタル機器の活用はもちろん、遠隔での学びやリサーチ利用に慣れさせる環境が整っています。図書館には洋書・英語資料が豊富で、研究活動や英語での資料読解をサポートできるインフラがあります。
また、グローバル教育という観点では、ネイティブ教員が英語の授業やエッセイ添削を担当し、生徒が英語で考え・書く・議論する機会を多く持てる体制が整っています。海外大学進学を希望する生徒には進路指導も手厚く、奨学金取得サポートもあるため、単に「英語が話せる」だけではなく、「世界に通用する学び」を実現するための環境が用意されています。
広尾学園と広尾学園小石川/系列校との比較
広尾学園中学校が位置する「南麻布」は本校キャンパスとして、上記の国際教育・探究・ICTの拠点です。本科・インターナショナル・医進サイエンスの3コースがあり、進度の速さや教員の専門性・施設の充実度などが特に高く評価されています。高校に進むと、AP(Advanced Placement:大学レベルの科目)の導入などを通じて、よりグローバルな大学進学を見据えたカリキュラムが展開されています。
一方、広尾学園小石川(文京区本駒込)は2021年に共学化してできた系列校で、南麻布との教育連携を持ちつつ、地域性や立地を生かした特色があります。小石川でもインターナショナルコースを設け、AG・SGの区分がありますが、南麻布ほどの実績の歴史はまだ浅く、本校と比べると”伸ばす余地がある”部分もあります。
とはいえ、理念や授業内容・学びの方向性は共通しており、教育内容はどちらも高い国際教育環境を期待できる選択肢です。また、小石川は定員120名というスケールで多様性や柔軟性が強みとなっています。
英語入試の全体像【2025年最新版】|出題形式・配点・求められる英語力まで
広尾学園の英語入試は「インターナショナルコースAG(アドバンストグループ)」に進むための重要な入口です。最新の募集要項をもとに、入試方式ごとの違い、試験構成、そして求められる英語力について整理しました。
基本の入試概要
一般入試 国際生AG回
- 受験資格:英検2級以上、または同等の英語力を有すること
- 合格見込数:約25名
帰国生入試
- 受験資格:
- 原則、海外在住経験が1年以上あり、帰国後3年以内であること
- 英検2級以上、または同等の英語力を有すること
- 合格見込数:約50名
試験科目(共通)
- 国語(日本語出題、100点・50分)
- 算数(英語出題、100点・50分)
- 英語(英語出題、100点・50分)
- 面接(日本語・英語の両方)
英語試験の構成と配点バランス
- 時間:50分
- 配点:100点
- 形式:すべて記述式
出題は大きく3つのパートで構成されます。
- 小説の一節を題材とした読解
- 詩の読解問題
- 小説と詩を比較・関連づけて論じるエッセイ
算数(英語出題)・国語も各100点、合計300点に面接を加えて総合判定が行われます。
英語力の目安と免除制度
募集要項では、TOEFL iBTスコアを利用した英語試験の免除制度が明記されています。
- 基準:90点以上で英語の試験を免除可能
- 扱い:120点満点を90点換算(90点=67.5点)
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注意点:免除を申請すると当日の英語試験は受けられず、特待生合格の対象外
出願から2年以内のスコアのみ有効で、MyBestスコアやHome Editionは不可です。免除を狙うなら、TOEFL iBT 90点は必須、90点以上で安心、という感覚で考えると良いです。
TOEFL iBT 90点は、CEFR(ヨーロッパ言語共通参照枠)のC1レベルに相当するとされています。C1は「高度な言語使用者」レベルであり、大学の講義や専門的なディスカッションを英語で十分理解・参加できるレベルです。
この基準からも、必要とされる英語力は英検準1級〜1級レベルが現実的な目安です。国際生AG回は英検2級以上が条件ですが、実際には準1級相当の力を持つ生徒が合格しています。
英語試験で問われる力
広尾学園の英語試験は、「知識」よりも「英語を使って思考・表現できる力」を測る試験です。具体的に求められるのは次の3点です。
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語彙力
小説や詩では日常英語にとどまらず、比喩や抽象表現が頻出します。単語の意味を知っているだけでなく、文脈でニュアンスをとらえる力が欠かせません。 -
読解力
問われるのは表面的な内容理解ではなく、登場人物の心情やテーマ性を読み解く力です。詩の問題では象徴や暗喩をどう解釈するかがポイントになり、解答は受験生の読解の深さを映し出します。 -
表現力(記述・エッセイ)
最後のエッセイでは「小説と詩に共通するテーマを論じよ」といった課題が頻出です。ここで重要なのは、自分の考えを論理的に段落構成で書き上げる力です。文法や語彙の正確さはもちろん、説得力ある文章構成が評価の鍵となります。
さらに、面接(日英)も重視されるため、リスニングやスピーキングの瞬発力も合否に直結します。
なぜこの力が求められるのか
広尾学園の狙いは、単に「英語ができる生徒」を選ぶことではありません。小説や詩を題材にするのは、言語を通じて思考を深め、異なる表現を比較し、自分の意見を論理的に発信できるかを測るためです。
これは、将来の学びを国内難関大学や海外大学へとつなげる広尾学園の教育方針と直結しています。入試自体がすでに「授業で求められる学び方」を体現している、と言っても過言ではありません。
広尾学園の英語面接|形式と頻出テーマを理解する
広尾学園の英語入試では、筆記試験に加えて英語・日本語の両方を使った本人面接(約10分)があります。面接は知識を問う場ではなく、広尾学園の生徒としてふさわしいか、入学後授業を英語で受け、仲間と意見を交わしながら学ぶ力があるかどうか、を確認する場です。ここでは、過去の出題傾向をもとに、面接の頻出質問を整理します。
面接の形式
- 時間:おおよそ10分程度
- 言語:日本語と英語の両方で実施
- スタイル:個人面接(受験生1人に対して複数の面接官)
特にインターナショナルコースAGでは、入学後に授業の多くを英語で受けるため、単に暗記した表現を答えるのではなく、即興的に答える力が評価対象になります。
質問内容の傾向
面接では受験生が自分の考えや経験を基に、率直かつ論理的に表現できる質問が聞かれます。過去の面接内容から、代表的な質問は以下のとおりです。
- 自己紹介
- テストを受けての感想
- 広尾学園を志望する理由や入学後の目標
- 海外での経験について
- 将来の目標とその理由
- 校則を守れるかどうか(日本語)
- 意見を述べる質問
意見論述の質問・回答例
面接に限らず、エッセイでも意見論述の問題は頻出です。口頭でも筆記でも「自分の考えを持ち、相手にわかりやすく伝える姿勢」を評価する問題であることを意識して回答しましょう。
(あなたにとって“成功”とは何ですか? 勉強や日常生活の中で成功を感じた経験について教えてください。)
To me, success means achieving a goal after making continuous efforts, even when the process is difficult.
For example, when I was living abroad, I struggled with understanding science classes in English at first. I decided to study a little bit every day, asking questions to my teachers and friends. After a few months, I was able to give a presentation in front of the class with confidence.
At that moment, I felt that my efforts had paid off, and I understood that success is not just about the result, but about overcoming challenges through persistence.
(私にとって成功とは、たとえ過程が困難であっても、継続的な努力を重ねたうえで目標を達成することです。
例えば、私が海外に住んでいたとき、最初は英語での理科の授業を理解するのに苦労しました。そこで、毎日少しずつ勉強し、先生や友達に質問をして理解を深めることにしました。数か月後には、自信を持ってクラスの前で発表ができるようになりました。
その瞬間、努力が実を結んだと感じることができました。そして、成功とは単に結果を得ることだけではなく、粘り強さを持って困難を乗り越えることにあるのだと理解しました。)
質問の意図として、価値観や過去の経験を通じて、努力や問題解決のプロセスを語れるか、また、自分の成長や学びをどう捉えているかが問われています。
定義+エピソード+学びの三部構成で、論理的な回答になっています。具体的な経験(帰国生入試の場合は、特に海外経験)のエピソードを交えながら「努力・継続・挑戦」というポジティブな姿勢を示せるとよいでしょう。
Yes, I think learning from failure is more important. The reason is that failure forces us to reflect deeply and find ways to improve ourselves.
For instance, when I once failed to join a sports team abroad, I realized that I needed to practice more and manage my time better. That experience motivated me to train harder, and eventually I became part of another team the following year.
Success can give us confidence, but failure teaches us lessons that stay with us for a long time. Therefore, I believe failure provides more opportunities for personal growth.
意識すべきは「なぜそう思うのか」を普段から言語化できるようにすることです。家庭で日常的に「Why?」「How?」と問いかけ、考えを英語で説明する習慣をつけることが、合格にも直結する対策になります。
まとめ|英語で考え、伝える力を育てる入試にどう備えるか
広尾学園の英語入試は、単に語彙や文法の正確さを測る試験ではありません。小説や詩を読み解き、自分の考えを論理的に表現するエッセイ、さらに日英両方で行われる面接を通して、「言葉を使って考え、相手に伝える力」が問われます。まさに、英語を「知識」から「運用」へと高める学びが試されるのです。
英語入試の本質は「言葉の運用力」
資格試験のスコアだけでなく、そのレベルの英語を実際に使えるかどうかが評価の分かれ目です。読解問題では文章の背景や登場人物の感情を掘り下げる力、エッセイでは自分の意見を段落構成で論理的にまとめる力、面接では相手の質問に応じて柔軟に答える力が必要とされます。こうした力はすべて「英語で考え、伝える力」を土台としています。
詩や小説を軽視しない準備こそ合格への近道
広尾学園の英語試験の大きな特徴は、詩や文学的な文章を題材にしていることです。比喩や象徴を含む表現を読み取り、自分なりの解釈を示すには、短答式の問題練習だけでは不十分です。
そのため、詩や小説問題を軽視せず、時間をかけて準備することが合格への近道となります。たとえば、普段から詩や短編小説を読み、そのテーマや心情を要約して意見を述べる練習を繰り返すことで、試験本番のエッセイや面接に強くなります。
面接も含め“自己表現”の力を伸ばす
英語面接やエッセイでは「なぜそう思うのか」を根拠と一緒に説明できるかがカギです。好きな科目や将来やりたいことを問われたときに、体験談を交えながら答えることで説得力が生まれます。英検準1級の二次試験に近い形式が多いため、日常的に「Why?」「How?」と問いかけられても自然に答えられるようにすることが重要です。
ここで見逃せないのが、日ごろの読書や時事問題への姿勢です。普段から幅広い本を読み、社会の動きに関心を持ち、自分の言葉で意見をまとめる習慣を持つ生徒は、面接でも自然に深みのある答えを出せます。逆に、詩や時事的なテーマを避けてきた生徒は、面接で具体性に欠けてしまいがちです。
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